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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)2248号 判決 1954年10月26日

国籍

北朝鮮咸鏡南道北青郡徳城面

住居

函館市新川町七七番地

古物商

星村こと

裵章錫

大正一一年一二月二九日生

右麻薬取締法違反被告事件について昭和二九年六月八日札幌高等裁判所函館支部の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人竹沢哲夫の上告趣意は、憲法違反を主張する点があるけれども第一審判決が勾留中の被告人に対し懲役刑の執行猶予の判決を云渡したため勾留状が効力を失つた(刑訴三四五条)後においても、刑訴六〇条各号に規定する事由が新に生じた場合には、控訴審において新に勾留状を発することを禁止する法規は存在しないのであつて、かかる場合の勾留の期間は勾留状執行の日から起算し(刑訴六〇条二項は、逮捕に引き続いて勾留する通常の場合の規定たるに止まる。)、勾留期間更新の制限、保釈についても刑訴六〇条以下の規定に照してこれを行うべきものである従つて原審が保釈の却下に当り、勾留原由の存続の外に刑訴三四四条を援用したのは相当でないが、(右保釈却下決定は異議申立の結果札幌高等裁判所により取消され保釈になつているのである)これに対する不服を上告の理由とすることはできない。そして右の瑕疵があつたからといつてその一事を以て原裁判所が公平な裁判所でないといえないことも当裁判所の判例(論旨引用の判決のほか昭和二二年(れ)一七一号同二二年五月五日大法廷判決写参照)に照して明らかである。また勾留そのものが適法である以上憲法二二条に違反するとの論旨はその前提において採用し難い。その余は量刑の非難であつて上告適法の理由にならない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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